
臍ヘルニアとは
赤ちゃんの臍の緒が取れた後に、臍の根元が閉じない場合に、赤ちゃんが泣いたりいきんだりしてお腹に力が入って(腹圧が上昇して)、腸が臍の根元から皮下まで飛び出して、臍が突出した状態になることがあります。
これを臍ヘルニアといいます。

新生児10人に対して約1人に発生すると言われています。低出生体重児ではさらに頻度が高くなります。生後2~4ケ月頃にヘルニアの大きさが最大となり、以後は縮小していき、1年で80%が、2年で90%が自然治癒すると言われています。
きわめて稀ですが、飛び出した腸管がヘルニアの出口で強く締めつけられ血流障害を起こすことがあります。これをヘルニア嵌頓と言います。症状は嘔吐、啼泣、不機嫌、整復困難な臍の膨隆などで、緊急処置を必要としますので赤ちゃんのとお臍の様子をよく見てあげてください。
症状・診断
臍ヘルニアを指で押すと、母乳・ミルクと空気が混ざった腸管内容物がグジュグジュするのが感じられます。臍の突出だけでは特に症状出ることはありません。突出した臍は指で押すと容易に腹腔に戻せます。
診断は、臍の根元から腸が皮下まで脱出し、臍が膨らんだ状態になるという特徴的な所見で診断されます。
治療① 自然治癒
1年で80%が、2年で90%がに自然治癒します。そのため2歳頃までは放置してもかまいません。
治療➁ 手術
1年で80%3~4歳になっても自然治癒しない場合や、腹壁の孔(あな)が2cm以上と大きな場合、孔が閉鎖しても巨大な突出の場合、醜い形で治った場合、余剰皮膚が飛び出している場合、患児さんやご家族が臍の形を気にする場合、などは小児外科で臍の形成術を行います。手術ご希望の場合は、紹介状を御用意します。%がに自然治癒します。そのため2歳頃までは放置してもかまいません。
治療③ 臍ヘルニア圧迫療法
以前は、臍ヘルニアのほとんどは自然治癒することから、2歳まで経過観察することが普通でした。
しかし、2000年頃から、圧迫療法の有効性が報告されるようになりました。すなわち
・圧迫療法を行うと、治癒が早くなる。
・圧迫療法を行うと、治った時の見た目がよくなる。
(穴が閉じても、臍の皮膚がシワシワになったりせずに治癒する。)
2011年に報告されたアンケート調査によると、日本の小児外科専門医の約6割がこの治療法を行っているといわれています。
具体的な方法は
1.臍ヘルニアのでっぱりを戻す。
2.臍部に上に綿の球を乗せ、しっかりと押し当てる
3.綿球を皮膚で覆って固定し、水が入らないように透明なフィルムを貼る。
圧迫療法の原理はほぼ同じですが、各病院、各医師によってやり方が少し異なります。
・医師に指導されて家族が家庭で行う方法
・医師が定期的に外来で行う方法
の2つに大別されます。
また、圧迫療法に用いる材料は様々です。
圧迫材料による皮膚炎の発生が心配されますが、圧迫予定部を消毒すれば約1週間は皮膚炎はほとんど起こりません。
当院では、臍の消毒とテープかぶれの確認も兼ねて2週毎の受診、綿球+テープの貼り換えを行います。
生後6か月以上になったり、つかまり立ちするようなると、腹筋が鍛えられて、圧迫療法が有効ではなくなると言われています。以後は2歳まで経過観察し、必要に応じて小児外科に相談することになります。
白線ヘルニア
腹壁正中部を構成する白線より発生するヘルニアで、上腹壁ヘルニアともよばれます。通常ヘルニア門は小さく、ヘルニア内容を伴わない小腫瘤として認めらます。乳幼児では自然治癒が期待できますが、治癒傾向がない場合には手術適応となります。
臍肉芽腫
臍の凹部に組織が盛り上がって突出物の様に見えることがあります。臍断端の炎症による肉芽形成で、臍肉芽腫と言います。ステロイド外用剤の塗布または硝酸銀による焼却が有効です。ポリープ状のものは結紮を要することもあります。
これらの治療によっても長期にわたって臍部の湿潤が認められる場合は、尿膜管遺残や腸膜管遺残など腹部の疾患が隠れていることがありますので、小児外科での精査が必要です。そのような場合は紹介状を御用意します。