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2025.07.25第8回 カゼの咳や鼻汁をすぐに止める特効薬はありません。
20年以上前、医者1年目の僕が初めて外来診察をする時、ある先輩から教えてもらったことがあります。
「カゼの子には抗生物質と、アスベリン・ムコダイン・ペリアクチンをとりあえず処方しとけばいい。」と。
これはこの先輩だけではなく、昔の日本全国共通のお決まり処方セットだったようです。しかし、僕たち世代が今の若い先生の指導医になってからはこのような指導はしていません。医学的根拠がないからです。
アスベリンは、咳止め薬として日本で50年以上前からある古い薬ですが、海外では承認されていません。しかも、イヌ・ウサギ・ハトで効果があったデータはありますが、ヒトに効果があった医学的データはありません。つまり科学的・医学的根拠はないのです。
ムコダインは、咳や鼻汁を止める効果はありませんが、痰や咳、鼻汁を出しやすく、切れやすくする効果があります。症状を和らげてくれます。
ペリアクチンなどの抗ヒスタミン剤は、アレルギー性鼻炎には有効ですが、ふつうのカゼの鼻汁に効くという医学的データはありません。カゼの鼻汁に効くと昭和の日本では考えられていましたが、それは、抗ヒスタミン剤は鼻粘膜を乾燥させるので、鼻汁がねばくなり、見た目は鼻汁が減ったようになるからです。しかし、鼻汁がねばくなると鼻がつまって夜眠れなくなったり、痰もねばくなって、痰がらみの咳が続きます。副作用があり、脳に直接作用して、眠気、錯乱、幻覚、けいれんなどがあります。鼻汁に抗ヒスタミン剤が使われるのは日本だけのようで、アメリカでは2歳未満へは使用しないよう勧告がでています。
<副作用の注意すべき抗ヒスタミン剤>ペリアクチン、ポララミン、ザイザル、ザジテン(ケトチフェン)、セルテクト、ポララミン、ゼスラン/ニポラジン(メキタジン)、ジルテック(セチリジン)、クラリチン など
カゼの咳や鼻汁を止める特効薬はなく、アスベリンやペリアクチンなどが効く医学的根拠はなく、むしろ副作用が心配です。