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2026.01.18長引く咳の外来
長引く咳の外来
はじめに
お子さんが咳をしている姿を見るのは親として大変心配ですよね。咳が長引くとなるとなおさらでしょう。
様々な病気が原因で咳が長引くことがあります。ここでは、咳の原因となる『各病気の症状』に加え、『どうやって診断するのか』、『どうやって治すのか』、『豆知識』なども記載しています。
また、Q&A形式にして、
・咳に関する質問
・昔とは違うエビデンスに基づいた現在の医療
などについても記載しています。お子さんの咳がなかなか治まらなくて心配なお母さん、お父さんにぜひ読んで頂きたいと思っています。長引く咳の原因について一緒に考え、一緒に最善の治療を目指しましょう。
祇園ふたばこどもクリニック 木村健秀
★★★概要★★★
乳幼児の風邪の自然経過
咳の原因になる病気
①風邪、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎
②アレルギー性鼻炎
③気管支喘息
④受動喫煙
⑤マイコプラズマ感染症
⑥百日咳
⑦後鼻漏症候群
⑧感染後咳嗽
⑨胃食道逆流症
⑩気道異物長引く咳に関するQ&A
Q.風邪の咳はどれくらい続きますか?
Q.保育園に通い始めてから風邪を繰り返します。なぜですか?
Q.小児の咳に鎮咳剤(咳止め薬)は推奨されますか?
Q.小児の長引く咳に吸入(気管支拡張剤)は推奨されますか?
Q.小児の長引く咳に抗アレルギー薬は推奨されますか?
Q.小児の長引く咳にロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)は推奨されますか?(LTRA:キプレス、モンテルカスト、シングレア、オノン、プランルカスト)
Q.夜や朝に、咳が出やすくなるはなぜでしょう?
Q.咳が出て、休日や夜間でも救急病院を受診すべき目安を教えてください、Q.そもそも、なぜ咳や鼻水は出るのでしょうか?
Q.「色のついた鼻水が出てるから抗生物質を飲みましょう。」と耳鼻科で言われましたが、子どもはとても元気そうですが、抗生物質は必要でしょうか?
Q.ホクナリンテープ(ツロブテロール貼付薬)は「咳止め薬」ですか?★★★★★★★★★★
乳幼児の風邪の自然経過
「長引く咳」というのは、どのくらい続けば「長い」と言えるのでしょうか。

発熱は、通常2~3日で落ち着きます。
咳や鼻水は、熱が下がった後、発病4~5日目がピークになりやすいと言われています。その後は徐々に改善していき、2週間で治まることが多いです。ある研究では、
・2週間の時点で4人に1人の咳が残っている。
・4週間かかる人も10%いる。
という報告もあります。【咳の期間での分類】
急性咳嗽(3週間未満):
ほとんどがウイルス感染による風邪。10日~2週間以内に治まることが多いです。遷延性咳嗽(3~8週間):
マイコプラズマ肺炎や百日咳、副鼻腔炎(後鼻漏)、感染後咳嗽(ウイルス感染後に気道が敏感になる状態)などが原因となることがあります。慢性咳嗽(8週間以上):
気管支喘息、アレルギー性鼻炎、心因性咳嗽などの可能性があります。咳の原因になる病気
①風邪、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎
【どんな病気?症状は?】
症状は、咳、痰、鼻水、発熱などです。原因の多くはウイルス感染で、時に細菌感染のこともあります。【どうやって診断するの?】
発熱、咳などの症状に加えて、肺炎などでは血液検査やレントゲン検査などを行って診断します。【どうやって治すの?】
ウイルス感染が原因であれば抗生物質は無効ですので、症状を和らげる薬で治療します。
細菌感染が原因であれば抗生物質を使用します。【豆知識】
ウイルスによる咳は多くの人が10日から2週間で改善するといわれていますが、一部の人では長引くことがあります。また他の病気が隠れていることもありますので、咳が2~3週間以上続く時は、小児科を受診してください。
②アレルギー性鼻炎
【どんな病気?症状は?】
症状は、鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、咳などです。鼻水がのどに垂れ込んで咳が出ます。起床時などに咳が増えるのが特徴です。【どうやって診断するの?】
症状に加えて、アレルギー検査などを組み合わせて行います。【どうやって治すの?】
花粉やダニなどの吸入アレルゲン(アレルギーの原因物質)の回避を基本とし、内服薬、点鼻薬などの治療を行います。【豆知識】
お子さんのアレルギー性鼻炎は増加傾向で、低年齢化が問題となっています。
気管支喘息を合併することが多いので、アレルギー性鼻炎がある患者さんに、咳やぜーぜーがあるときは要注意です。また、気管支喘息を合併している場合は、アレルギー性鼻炎の治療をしっかりすることで気管支喘息の症状も改善します。
③気管支喘息
【どんな病気?症状は?】
発作性におこる咳、ぜーぜー、呼吸困難などを繰り返す慢性疾患です。咳、ゼーゼー、呼吸困難といった症状が、風邪、運動、アレルゲン(アレルギーの原因物質)の吸入、天候の変化などをきっかけとして何度も繰り返すことが特徴です。【どうやって診断するの?】
繰り返すぜーぜーや咳、呼吸が苦しいなどの既往歴、家族のアレルギー歴、診察時の聴診音、血液検査などを組み合わせて診断します。【どうやって治すの?】
発作治療薬として、気管支拡張剤の吸入や内服をします。
発作予防薬としては、内服薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬)、吸入薬(ステロイド)などを用いて毎日治療を行います。【豆知識】
気管支喘息などのアレルギーの病気を悪くするものに、ダニ、タバコの存在があります。
部屋はこまめに掃除をして、布団は干した上で掃除機をかけましょう。
絨毯(じゅうたん)や布製の家具は避け、居間や寝室をフローリングにしたほうがダニは増えにくいです。毛のあるペットを飼っていると、ダニが増えてしまい、喘息がなかなかよくならないことがあります。
タバコを吸っている同居人の方は是非禁煙しましょう。
④受動喫煙
【どんな病気?症状は?】
症状は咳、痰、ぜーぜーです。原因は同居する家族の喫煙です。【どうやって診断するの?】
問診で診断します。【どうやって治すの?】
禁煙です。屋外で喫煙したり、換気扇の下で喫煙する方もいますが、吸ったものは口から出てしまうので、その影響は残ってしまいます。【豆知識】
保護者が喫煙しているとお子さんが感染症にかかりやすくなったり。喘息になりやすくなるといわれています。(喫煙は妊娠中から避ける必要があります。)
同居人全員の禁煙が必要です。

⑤マイコプラズマ感染症
【どんな病気?症状は?】
マイコプラズマという細菌の感染症です。長く続く咳や熱が特徴で、気管支炎や肺炎になりやすいです。飛沫感染しますので、職場や学校などの集団での感染がみられます。
潜伏期間は、2~3週間です。
初期症状は、発熱、倦怠感、頭痛ですが、その後から咳が始まり長く続きます。最初は乾いた咳ですが、徐々に咳が強くなり、湿った咳や喘鳴(ゼイゼイ)になったり、3~4週間と咳が長く続くことが多いです。【どうやって診断するの?】
咳が長く続いたり、胸部レントゲンで陰影がある場合等で、マイコプラズマを疑います。<抗原検査>
咽頭拭い液で調べます。結果は15分で出ますが、精度は高くありません。<血液検査(抗体検査)>
以前からある検査で、外部の検査会社に依頼しますので結果が出るまで数日かかります。2回検査することがあります。<血液検査(LAMP法)>
PCRと同様で遺伝子検査で精度は高いです。ただ外部の検査会社に依頼しますので結果が出るまで3日程度かかります。当院では、これら従来の検査ではなく、精度が高く短時間で結果の出る新しい検査:ビオメリュー・ジャパン株式会社の「BioFire SpotFire Rパネル」(多項目同時検出PCR検査)を導入しています。
https://www.futaba-kids.net/biofirespotfire/
結果は約17分間で出て、精度の高い検査です。
マイコプラズマ感染症も含む計15種類の細菌・ウイルスを一度に検査できます。【どうやって治すの?】
治療は、マイコプラズマに対応した抗生物質です。
(重症の場合は総合病院の小児科に入院することもあります。)
抗生物質が効きにくいマイコプラズマの場合もあるので、熱が長く続く場合は抗生物質の変更が必要です。【ご家庭でご注意いただきたいこと】
咳は3~4週間は続きますので根気強い治療が必要です。抗生物質を飲んでいても熱が続く、咳で眠れない、などあれば救急病院を受診しましょう。

⑥百日咳
【どんな病気?症状は?】
百日咳菌による感染症です。6ヵ月以下、特に3か月以下の乳児では重症化することが多く、特に注意が必要です。
学童・成人でも咳が長期に持続します。
乳児の場合、特徴的な咳が出やすくなります。すなわち、発作的な短い咳(痙咳)が連続して起こります「スタッカート」。この短い咳が治まった後に急に深く息を吸うため、「ヒュー」のような笛声(てきせい)「ウープ」が聞かれます。咳と笛声が繰り返される「レプリーゼ」という状態になりますが、発作が無い時はほとんど無症状なのが特徴です。【どうやって診断するの?】
百日咳の診断は、特有の咳があれば疑いが強くなりますが、予防接種済の方は診断が遅れることがあります。
検査としては、以下のものがこれまでありましたがメリット・デメリットあります。<抗原検査>
鼻咽頭拭い液で調べます。結果は15分で出ますが、精度は高くありません。<培養検査>
鼻咽頭拭い液で調べ、結果は数日かかります。精度はPCRより落ちることがあります。<血液検査(抗体検査)>
結果は数日かかります。精度は高いです。当院では、これら従来の検査ではなく、精度が高く短時間で結果の出る新しい検査:ビオメリュー・ジャパン株式会社の「BioFire SpotFire Rパネル」(多項目同時検出PCR検査)を導入しています。
https://www.futaba-kids.net/biofirespotfire/
結果は約17分間で出て、精度の高い検査です。
百日咳も含め、計15種類の細菌・ウイルスを一度に検査できます。【どうやって治すの?】
治療は、百日咳に対応した抗生物質です。
(重症の場合は総合病院の小児科に入院することもあります。 )【ご家庭でご注意いただきたいこと】
小学校入学前の「三種混合ワクチン」追加接種が推奨されています。
こんなときは夜間でも救急病院を受診してください。
・咳込みが激しく、咳が10秒以上止まらず顔が真っ赤になるとき。
・咳で水分が飲めない、夜眠れないとき。
・咳が続きすぎて呼吸が止まりそうになるとき(無呼吸)。

⑦後鼻漏症候群
【どんな病気?症状は?】
鼻水は通常、鼻の穴から前に出てきますが、一部がのどの奥(後ろ側)へ流れることがあります。この状態を「後鼻漏」といいます。実は、健康な人でも無意識に鼻水がのどへ流れています。鼻炎や風邪で鼻水の量が増えたり、粘り気が強くなったりすると、「ドロっとした鼻水」が、のどや気管の入り口を刺激します。特に夜寝ている間は、重力の影響で鼻水がのどにたまり刺激しやすいため、激しい咳き込みの原因になります。【どうやって診断するの?】
詳細な問診、咽頭の診察が基本です。耳鼻科での鼻咽腔ファイバー(内視鏡)検査も有用ですがお子さんには負担が大きいです。原因としては、
・風邪(感染症): ウイルスや細菌による鼻水。
・アレルギー性鼻炎: 花粉やダニなどによるサラサラした鼻水。
・副鼻腔炎: 鼻の奥の空洞に膿がたまり、粘り気のある鼻水が出る。【ご家庭でご注意いただきたいこと】
・鼻をかむ・鼻吸い: こまめに鼻水を取り除いてあげましょう。
・水分補給: 水分を摂ると鼻水の粘り気が抑えられ、流れやすくなります。
・加湿: お部屋の湿度を50〜60%に保ち、のどの粘膜を守ります。
⑧感染後咳嗽
【どんな病気?症状は?】
カゼなどウイルス性気道感染症による咳のほとんどは2週間以内に落ち着くことが多いです。しかし、一部の患者さんでは急性期を乗り越え病原体が消失した後も気道感染の影響で咳が出やすい状態が持続すします。これを「感染後咳嗽」といいます。
かぜのウイルスによって気道の粘膜が荒れてしまい、わずかな刺激(冷たい空気、会話、走る、寝返りなど)にも過敏に反応して咳が出てしまう状態です。【どうやって診断するの?】
カゼ症状の後に咳が3週間以上続き、他の病気が除外され、多くは自然に軽快するという経過で総合的に判断します(病歴聴取が中心)。【ご家庭でご注意いただきたいこと】
加湿をしっかりと: 湿度は50〜60%をキープ。喉の乾燥を防ぎます。
こまめな水分補給: 喉を湿らせ、痰を出しやすくします。
はちみつの活用(1歳以上): 寝る前にティースプーン一杯のはちみつは、咳止め薬と同等の効果があると言われています。※1歳未満には絶対に与えないでください。
刺激を避ける: タバコの煙や、急激な温度変化(寒い屋外に出る時など)に注意しましょう。

⑨胃食道逆流症
【どんな病気?症状は?】
症状は、咳、ぜーぜー、無呼吸(呼吸をやめてしまう)、繰り返す感染、嘔吐などです。
原因は胃の内容物が逆流し、気道(空気の通り道)に入りこんでしまうことです。【どうやって診断するの?】
症状にあわせて必要に応じて検査(24時間pHモニタリング、内視鏡検査、消化管の造影検査など)を行って診断します。【どうやって治すの?】
ミルクを小量ずつこまめに与えたり、ミルクに増粘剤(粘り気をだすもの)を加えたりして嘔吐しにくくします。
また胃酸の分泌を抑えるために胃薬を使用することもあります。
ミルクをあげた後はすぐに横にせず、縦抱きにすることも大切です。【豆知識】
肥満が原因になっている時は減量も重要です。

⑩気道異物
【どんな病気?症状は?】
症状は、突然の咳き込み、ぜーぜーから始まることが多いです。
気道の太いところに詰まれば窒息することもあります。
原因となるものはピーナッツ、玩具などです。【どうやって診断するの?】
何かを飲み込んでいる場面を目撃した、口に何かを入れていた前後で発症したなどのエピソードに加えて、レントゲン、CT、気管支鏡などの検査を行って診断します。【どうやって治すの?】
気管支鏡を用いて異物を取り出します。【豆知識】
特に多いのが3歳未満の男児です。
3歳未満のお子さんがいる家庭では予防を徹底しましょう。
総合病院で診断、治療することが多いです。

長引く咳に関するQ&A
Q.風邪の咳はどれくらい続きますか?
A.いわゆる風邪の咳は、多くのお子さんは、10日~2週間で軽減します。ですが、この期間は個々の症状により、変わることがあります。
乳幼児では風邪を繰り返して咳が長引くこともありますが、咳が2~3週間以上続くときは、別の病気のサインかもしれません。例えば、気管支炎、肺炎、アレルギー性鼻炎、喘息などです。そのため、咳が2~3週間以上続く場合は、医師に再度相談することが大切です。

Q.保育園に通い始めてから風邪を繰り返します。なぜですか?
A.保育園などの集団生活を始めたお子さんは、様々な病気に繰り返し感染します。1つの風邪に感染して治るまでに10日~2週間かかりますが、その治りかけでまた別のカゼに感染してしまう、という感じです。
これは、咳や鼻水を引き起こすウイルス・細菌が何百種類も存在し、集団生活を始めるとそれらに触れる機会が多くなるためです。これはどのお子さんでも通る道であり、繰り返し感染すことで免疫力を身につける大切な成長の過程でもあります。
ただし、咳が悪化する場合や長期間改善しない場合は、小児科受診をおすすめします。
Q.小児の咳に鎮咳剤(咳止め薬)は推奨されますか?
A. 昔の医療では、「咳が出ていたら咳止め」と言われている薬を処方するのが一般的でした。
しかし、今の医療は違います。
咳は、基本的にからだの防御反応ですので、咳があるからといって一律に咳止めを処方することはありません。
日本には咳止め薬と言われている薬があります。例えば、
・チペピジンヒベンズ (商品名アスベリン)
・デキストロメトルファン(商品名メジコン)
・コデイン (商品名コデイン)などがありますが、実はこれら咳止めと言われている薬に咳を止めるという医学的根拠・データはありません。医学書にも「エビデンスはない」と明記されています。
夜間でお子さんの咳が止まらない場合、対応に困ると思います。ただ、安易に市販薬の咳止め薬を飲むのは控えましょう。市販薬に「コデイン」が含まれていることがありますが、2019年から、12歳未満への使用は禁忌となっています。
日本小児呼吸器学会 小児の咳嗽診療ガイドライン2025

Q.小児の長引く咳に吸入(気管支拡張剤)は推奨されますか?
A.小児の長引く咳の原因が喘息の場合は、気管支拡張剤は有用です。しかし、喘息でなければ気管支拡張剤は無効、エビデンスはない、と欧米のガイドラインに記載されています。むしろ、不要な薬剤投与を行わないことが学会などで推奨されています。
日本小児呼吸器学会 小児の咳嗽診療ガイドライン2025

Q.小児の長引く咳に抗アレルギー薬は推奨されますか?
A.咳の原因がアレルギー性鼻炎の場合は、海外の論文でも抗アレルギー薬が推奨されています。しかし、アレルギー性鼻炎など明らかな原因がない咳は(ふつうの風邪の咳は)、成人の場合と異なり、抗アレルギー薬(ヒスタミン受容体拮抗薬など)を投与しないことが学会などで推奨されています。
また、抗アレルギー薬には、熱性けいれんのリスクが指摘されています。
以上から、抗アレルギー薬は、有効性に乏しい一方で副作用のリスクがあると言えます。
日本小児呼吸器学会 小児の咳嗽診療ガイドライン2025

Q.小児の長引く咳にロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)は推奨されますか? (LTRA:キプレス、モンテルカスト、シングレア、オノン、プランルカスト)
A.小児の長引く咳の原因が喘息の場合は、海外の論文でもロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)の有効性が報告されています。しかし、喘息などの基礎疾患がない場合は、LTRAの有効性はない、と報告されています。
小児の長引く咳の治療として、一律にLTRAを投与しないことが推奨されています。
日本小児呼吸器学会 小児の咳嗽診療ガイドライン2025

Q.夜や朝に、咳が出やすくなるはなぜでしょう?
A.夜間や早朝に咳が出やすくなる理由はいくつかあります。
【理由①】まず、人間の体は睡眠時にリラックス状態になり、 副交感神経が優位に働きます。その結果、睡眠時は気道が狭くなり、ちょっとした刺激でも咳が出やすくなります。一方、昼間には交感神経が活発になるため、気道が広がるため、咳が少なくなりやすいです。
【理由②】また、寝ている間に鼻水がのどに流れてしまい、これが咳の原因になることもあります。これを「後鼻漏」と言います。特に早朝は、体が寝ている間に溜まった鼻水が一気に流れるため、咳が出やすくなります。
【理由③】さらに、布団に含まれるハウスダスト、ダニが原因で咳を引き起こすこともあります。
以上のような理由で、夜間や早朝に咳が出やすくなることが多いのです。

Q.咳が出て、休日や夜間でも救急病院を受診すべき目安を教えてください。
A.下記の様な場合は救急病院でも良いので受診してください。
・夜間、咳で眠れない。
・咳き込んで何度も嘔吐する。
・咳が激しくて水分が飲めない。
・呼吸のたびに「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」と音がする。
・肩で息をする。
・首の付け根(鎖骨の間)や肋骨の間や下が呼吸の度に凹む。

Q.そもそも、なぜ、咳や鼻水は出るのでしょうか?
A.風邪の原因であるウイルスや細菌は、鼻から侵入して、鼻の奥で増殖します。このウイルスや細菌の侵入に対抗して、体の防御反応として免疫力が働いて、鼻の粘膜で鼻水が作られます。鼻水は、ウイルスや細菌を外界に排除する役割を果たしてくれます。
また、アレルギーを引き起こす物質が鼻に侵入した場合も、鼻水はそれを洗い流し、アレルギー反応を軽減してくれます。昔の医療では、風邪の鼻水を止めるために抗アレルギー薬が使用されていましたが、風邪の鼻水は大半がウイルス感染によるものであり、アレルギーによるものではないため、抗アレルギー薬の効果は限定的です。そのため、現在では風邪の鼻水に対しては抗アレルギー薬はあまり使われないようになりました。 ガイドラインでも推奨されていません。

Q.「色のついた鼻水が出てるから抗生物質を飲みましょう。」と耳鼻科で言われましたが、子どもはとても元気そうです。抗生物質は必要でしょうか?
A.黄色や緑色の鼻水が出ることは、カゼでも他の感染症でもよくあることですので、それだけで抗生物質が必要とは言えません。抗生物質は細菌をやっつける薬ですが、色のついた鼻水が必ずしも細菌感染を意味するわけではないからです。色のついた鼻水は、ウイルス性でも細菌性でもどちらでも見られる症状です。ヒトの免疫力がウイルスと戦う過程で、鼻水に白血球やウイルスの死骸が混ざることで鼻水が黄色や緑色になります。
風邪の大部分はウイルスが原因です。抗生物質は、細菌をやっつける薬であり、ウイルス感染症であるカゼには効きません。
ですので黄色や緑色の鼻水が出るというだけで、抗生物質を使う理由にはなりません。
【注意点】
黄色や緑色の鼻水が出る病気で副鼻腔炎の場合は抗生物質が必要になることがあります。お子さんは副鼻腔が発達途中のため、カゼの時に副鼻腔炎になりやすく、かつ自然治癒しやすい副鼻腔の構造に元々なっています。耳鼻科で副鼻腔のレントゲンを撮って、副鼻腔に液体貯留の所見があって副鼻腔炎と診断され抗生物質が処方される場合があるようですが、ガイドラインではこれは推奨されていません。副鼻腔炎の診断は、下記の条件を1つ満たす時とされています。
①膿性鼻汁が10日以上続く。
②顔面の腫脹や疼痛がある。
③経過中に39℃以上の発熱を伴い、膿性鼻汁が増悪する。黄色い鼻水が出るからと言って、すぐに抗生物質は必要ありません。

Q.ホクナリンテープ(ツロブテロール貼付薬)は「咳止め薬」ですか?
A.「咳がひどいので、『咳止めシール』をください」と言われることがあります。
一般的に、「ホクナリンテープ(成分名:ツロブテロール)」として知られるこのテープを「咳止め薬」と思っている方がいらっしゃいますが、実は「咳止め薬」ではありません。
【ホクナリンテープは「気管支拡張剤」です】
この薬の本当の作用は、狭くなった気管支(空気の通り道)を拡げることです。普通のカゼの場合、気管支に異常はなく、狭くなっていないので、このテープを貼っても全く何の効果もありません。
ホクナリンテープは「咳止め薬」ではないのです。【注意点1】
このテープの血中濃度のピーク値は、飲み薬のホクナリンの血中濃度のピーク値の半分以下です。テープは効果が弱いです。【注意点2】
このテープには即効性はありません。
貼ってから、8時間後に血中濃度が上昇し、12時間後にピークになり、24時間持続します。ですので、今出ている症状にすぐには効きません。基礎疾患に気管支喘息を持っている人が、夕方に貼って、朝に起きるかもしれない気管支喘息発作の予防に使う薬です。すでに起こっている喘息発作には効果がありません。血中濃度が上がるまでに、あまりにも時間がかかり過ぎるからです。
そして血中濃度が上がったとしても、濃度自体が低く効果が弱い薬です。【ホクナリンテープは使い道が限定的】
ホクナリンテープの添付文書(説明書)の効能・効果として、「下記疾患の気道閉塞性障害に基づく呼吸困難など諸症状の緩解:気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫」と記載されています。つまり、気管支が狭くなって(閉塞性)、ゼーゼー、ヒューヒュー息が苦しい症状(呼吸困難)に効く薬です。カゼに効くとか、咳を止めるとか、そのような記載もデータもありません。そもそも、海外では承認されてない薬、使用されてない薬です。使うとしても、気管支喘息を持っている人が、今ある症状を止めるのではなく、発作予防で使う薬です。
使い道はかなり限定的です。


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