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2025.09.23日本脳炎ワクチンの接種開始時期の変更についてー6か月からがおすすめですー
日本脳炎ワクチンの接種時期について変更がありますのでお知らせします。
日本脳炎の感染経路
日本脳炎は、蚊が媒介する日本脳炎ウイルスによる感染症です。日本脳炎ウイルスは、ブタの体内で増殖します。このウイルスを保有するブタを蚊が刺して、その蚊がこのウイルスに感染します。そして、その蚊が別のブタを刺してそのブタが感染します。このように、次々に感染を広げ、その中で蚊がヒトを刺すことで、ヒトへの日本脳炎ウイルスの感染が成立します。ヒトからヒトの感染はありません。
日本脳炎ワクチンの
接種開始時期
日本脳炎ワクチンの接種時期は、生後6か月から接種できますが、標準時期は「3歳から」、と日本小児科学会で言われています。ですので、当院も今までは「3歳から」の接種でスケジュールを組んでいました。
日本小児科学会
からの推奨
しかし、2016年に、日本小児科学会から、
日本脳炎罹患リスクの高い者に対する生後6か月からの日本脳炎ワクチンの推奨について
という推奨が出て、日本脳炎流行地域に渡航・滞在する小児、最近日本脳炎患者が発生した地域・ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、生後6か月から日本脳炎ワクチンの接種を開始することが推奨されるようになりました。日本脳炎の発生地域
最近の報告では、熊本県で2006年に3歳児(ワクチン未接種)、熊本県で2009年に7歳児(ワクチン未接種)、高知県で2009年に1歳児、山口県で2010年に6歳児、沖縄県で2011年に1歳児、福岡県で10歳児、兵庫県で2013年に5歳児、千葉県で2015年に11か月児、2023年は千葉県、茨城県、静岡県、大阪府、熊本県から症例が報告されています。報告例があった千葉県では、6か月からの接種が広く推奨されているようです。
広島県のブタの
日本脳炎抗体保有状況
ブタの日本脳炎抗体保有状況をみると、日本脳炎ウイルスは西日本を中心に広い地域で確認されていますが、広島県は以前までは抗体保有率は高くありませんでした。
しかし、2024年9月の調査で広島県のブタの日本脳炎抗体保有率が100%になりました。
広島県感染症・疾病管理センター 「日本脳炎の感染にご注意ください」
すなわち、広島県は、日本脳炎罹患リスクが高い地域 = 生後6か月から日本脳炎ワクチン接種が推奨される地域、となったのです。以前は「3歳から」
日本小児科学会の日本脳炎ウイルス開始の標準時期は、「3歳から」になっていますが、実はこの「3歳から」には医学的根拠がありません。以前は、日本脳炎の発症が3歳未満に少なかったり、1歳未満は他の予防接種があり日本脳炎まで入れるとスケジュールが煩雑になる等の理由のために、「3歳から」になったと言われていますが、医学的根拠はないようです。
「6か月から」でも、
「3歳から」でも、
効果は変わらない
ただ、「6か月から」接種した場合、「3歳から」接種に比べ予防効果が落ちるのでは、という心配がありますが、
Immunogenicity of live attenuated SA14-14-2 Japanese encephalitis vaccine–a comparison of 1- and 3-month immunization schedules. 1998 · Theodore F. Tsai, Yong-Xin Yu, Jia Li Li
この研究にあるように予防効果が同等であることが報告されています。
ですので、「6か月から」接種し始めても早すぎることはありません。
逆を言えば、3歳まで接種を待つメリットもありません。
広島市内の小児科でも、すでに「6か月から」接種しているクリニックも見られ始めました。まとめ
以上をまとめますと、
・これまでは、日本脳炎ワクチンの接種は「3歳から」開始が標準的でした。
・しかし、小児科学会からは、最近日本脳炎患者が発生した地域・ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、「6か月から」開始することが推奨されています。
・広島県は、2024年9月の調査で、「ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域」となりました。
・以上から、当院では、日本脳炎ワクチン接種は「6か月から」開始を推奨します。
日本脳炎ワクチン
スケジュールの1例
第1期初回
1回目:6か月時
2回目:7か月時
(B型肝炎3回目と同時接種。1回目と6日以上間隔をあける)第1期追加 1歳6か月頃
(水痘ワクチン2回目と同時接種)第2期: 9歳から13歳未満